圧電素子と電極を配置して、構造物の損傷を簡単にモニタリングできるようにした損傷センシングシート


本特許は、複数の圧電素子を配置した1枚の樹脂製フィルムと、これら複数の圧電素子と電極コネクタとを結ぶ導電回路を配置した別の樹脂製フィルムとを、圧電素子の配置された面と電極回路が配置された面とが接合するよう貼着して形成した非破壊検査用樹脂製フィルム(損傷センシングシート)である。。  シートは、複数の圧電素子を1枚のフィルム上に、例えばセラミック製圧電素子4個の検出素子を4隅に配置し、さらに1個の圧電素子からなるアクチュエータを中央に配置する。導電回路を配置した別の樹脂製フィルムはコネクターと検出素子およびアクチェータとをそれぞれ接続するように電極回路を導電ペーストで印刷して形成する。  シートを利用する方法は、検査構造物にシートを貼り付け、コネクターを通して直流電源から矩形波をアクチュエータに印加する。するとアクチュエータは発振し、発振した弾性波は構造体内部を伝搬して検出素子で検出される。検出した弾性波の出力信号をコンピュータで解析する。  波形変化から被検査体内のクラック、剥離等による質的変化を推測することができる。検出した波形や到達時間から損傷の種類や発生場所も特定することができる。  シートは被検査体に貼り付けるだけで使用できるので、鉄骨構造体、車体などセンサを埋設できない構造物や稼動している部材にも適用でき、構造体における損傷を断続的あるいは継続的に把握できる。
ユーザー業界 概  要
土木・建築
土木・建築
輸送
輸送
●大型構造物の疲労検査
  ビル、トンネル、橋、高速道路にある支柱等を完成時や定期検査において疲労検査する。

輸送
輸送
●輸送機器検査
  飛行機、車、列車、船舶の構造体等についての疲労度検査/耐衝撃性検査

機械・加工
機械・加工
電気・電子
電気・電子
●機器の耐久性検査
  機器、装置の稼動部や負荷部の耐久性を検査する。

生活・文化
生活・文化
●貴重遺産のモニタリング
  原爆ドーム、石造や木造等の老朽建築物の疲労度を検査する。


関連特許 あり
事業実績条件 ・実施段階:なし
・技術導入時の技術指導の有無:応相談
・ノウハウ提供:応相談
・ライセンス制約条件について:許諾
参考情報 近年、航空機、自動車、トンネル、架橋支柱のような大型構造物の疲労、損傷がよく問題になる。これらの点検は目視検査や打音検査が主流で、熟練技に頼っている。しかし、本特許の損傷センシングシートを用いることにより物理的特性を精密に定量に測定できるので熟練度に頼ることなく非破壊検査できる。  損傷センシングシートを構造体に貼り付けるだけで、損傷位置、損傷形態が把握できるだけでなく、断続的・継続的にモニタリングできるので、稼動状態や移動状態でも材質の質的変化を検知することができる。  このような検知技術は構造物の疲労や劣化等の基礎的研究に多大な貢献できるであろう。機器や装置の稼動部や負荷部の耐久性は重要な問題であるが、これらの耐久性試験や経年加速試験において有効なデータを提供でき、今後の展開が大いに期待できる。原爆ドームや石造・木造建築物のような貴重な遺産のモニタリングにも有効と思われる。



タイトル
(ライセンス情報)
損傷センシングシート

特許権者   独立行政法人産業技術総合研究所

ライセンス情報番号 L2003002840

お問い合わせ先
〒 305-8568
   茨城県つくば市梅園1-1-1
   独立行政法人産業技術総合研究所つくばセンター
   産総研イノベーションズ
     業務部門 部長
      山上 喜吉
      TEL:029-861-5210
      FAX:029-861-5087

出願番号 特願2000-311782

公開番号 特開2002-122574

特許番号 特許3459982

権 利 存 続 期 間 16年6ヶ月
(平32.10.12満了)

権利化情報 
出願日/平12.10.12  公開日/平14.4.26  登録日/平15.8.15 

用語解説  
圧電素子 ・圧力を加えると電圧が変化(圧電効果)する素子で、ジルコン酸チタン酸鉛がよく用いられる。
アクチュエータ ・電圧を印加するとひずみを発生する逆圧電効果を用い、デバイスをオン/オフする機構。
キューリー温度 ・昇温により圧電体の結晶構造が正方晶から立方晶に変わり、で圧電性を失ってしまう温度。
導電ペースト ・電気を通す膜を形成する前駆体で、ペーストを塗布・乾燥し液体部分を蒸発させて使用する。

参考情報  
 

原稿作成  
寺下 隆章  株式会社 ベンチャーラボ PDF