特許権侵害の危険性について
1.「試験又は研究」に関する解釈
特許法第69条1項には「試験又は研究」のためにする実施には特許権の効力が及ばないことが規定されていますが、すべての試験又は研究について特許権の効力が及ばないわけではありません。特許法第69条1項の「試験又は研究」の範囲は特許発明自体の「特許性調査」、「機能調査」及び「改良・発展を目的とする試験」に限られるというのが通説(注1)です。
他者の保有する特許権の対象となっているリサーチツールを、無許諾で作製するなどして自身の調査又は研究に用いている場合、その特許権を侵害している可能性がありますのでご注意ください。
詳しくは「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」(2004年11月、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会 特許戦略計画関連問題ワーキンググループ)をご覧ください。
2.特許権の効力が及ばないとされている例
【特許発明自体の特許性調査】
新規性、技術的進歩性の有無を調査するために行われる試験。
【特許発明自体の機能調査】
特許発明が実施可能であるか、明細書記載どおりの効果を有するか、副作用等の副次的影響を生ずるものか否か等の調査。
【特許発明自体の改良・発展を目的とする試験】
特許発明の対象について、さらに改良を遂げ、より優れた発明を完成するための試験。
3.特許権の効力が及ぶとされている例
【特許発明とは関係無い自身の試験又は研究のために特許発明を利用する場合】
開発した新薬の効果確認のために無許諾で特許権の対象を利用する試験。
(注1)染野啓子「試験・研究における特許発明の実施(I)(II)」AIPPI,Vol.33,No.3、2頁、No.4、2頁(1988年)。